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| 母の巻寿司 |
故郷を離れて50年、母の日には帰郷する事を慣例としていた。その都度かえりには、子供の頃から好物の巻寿司をもたせてくれた。幾つになっても子供は子供。母にとって、dささやかな慶びでもあったようである。母が85歳を過ぎた頃からだったろうか、ふと巻寿司の過多さが気になるようになった。いままでは力1杯に堅くつめられていた寿司が年毎に柔らかく、荒くなってきたのを感じるようになった。時にはかえりの車中に寿司がぽろりと落ちる事も有った。改めて一年ごとに老齢化する母を実感するようになった。一昨年の母の日のことである。92歳になった母が言った。「あんたの好きな巻寿司がな、もうまけにょうになってしもうた。力がのうなって巻けんおよ。お米がぽろぽろとこぼれてしもうてなーー」とさみしそうに言った。私は胸が1杯になり、何も言えなかった。その一年後、母は亡くなった。母の日が近いづく度に、ははの手巻きの巻寿司が懐かしく思い出される。
タカチャン さん